躯体工事で工期遅延や品質問題が発生した場合、発注を決めた側としては施主からの信用毀損や、数千万〜数億規模の損失につながる恐れがあります。だからこそ、どの躯体工事会社に発注するかどうか判断する場面では、安いかどうかだけでなく、品質や工期がどのように担保されるかどうかで選ぶことが現場全体の安定につながります。
この記事では、信頼して発注できる躯体工事会社を見極めるための判断基準やトラブル防止のために押さえておきたいポイントを整理していきます。
躯体工事の発注先検討で押さえておきたい2つのポイント
条件によって見積は変動するため、単価だけで発注検討は難しい
躯体工事は、同じ規模・同じ構造でも、現場条件や制約によって、対応範囲や工期などが変わります。
たとえば搬入経路の制約や作業時間の制限などは見積と工程の両方に直結します。単価だけで躯体工事会社の比較を行うと、条件による差が見えないまま進んでしまい、着工後に追加調整・追加費用・工程の認識にずれが起きやすくなります。
1.自社の発注条件と合うかどうか確認する
発注側は、発注したい現場の概要と自社の要望を発注検討中の躯体工事会社に提示しておくことで、その会社が躯体工事においてどこまで対応可能なのかが把握できます。躯体工事発注の検討段階では、必要に応じて以下の項目を躯体工事会社に提示してみましょう。
- RC造(WRC造)などの構造
- 用途
- 住所
- 延べ床面積
- 坪数
- 階数
- 予算感
- 希望する工期
2.条件に応じて工事の計画を立てられる会社かどうか
発注検討中の躯体工事会社に、その現場の条件やルールなどを説明し、それに応じた具体的な工事計画を立てられるかどうか確認します。発注側が抱えている案件に対応可能な躯体工事会社かどうかを判断するためです。たとえば、作業時間の制限や搬入・搬出経路の制約です。とくに作業時間の制限は、躯体工事会社が工事の計画を立てる上で重要な情報であることが多いです。一般的に8:00〜18:00で作業できる前提が取れるか、半日しか作業できないかで工程が変わるためです。
そして、その土地に以前どのような建築物や設備があったか(例:住宅・工場・井戸・墓地・埋設物など)の調査結果を躯体工事会社に提供しておくとさらに安心です。これらの情報によって、掘削時の制約や追加対応の有無が変わるためです。以下のような情報を発注前にまとめておき、必要に応じて躯体工事会社に提供できるようにしておきましょう。

躯体工事会社はこのような現場の条件を把握し、自治体への届出など、別途対応すべき内容があるかどうかを踏まえて工事の計画を立てる必要があります。前もって条件やルールの提示をしておくことで、発注側は躯体工事会社が作成する見積の精度や計画の具体性を判断しやすくなります。
品質を担保できる躯体工事会社を見極めるために
品質管理の運用レベルを報告書類の粒度で判断する
発注検討中の躯体工事会社はどのような運用レベルで品質管理を行っているのでしょうか。躯体工事会社には、品質管理においてどこまで報告書類が作成できるか、下記を参考に発注側から確認をしてみましょう。
- 工事中の月次報告書(予定、実績、工程にずれが出た理由と影響)
- 検査記録
- 打設計画書/打設報告
- パトロール報告書
当社の場合は、現場や対応範囲に応じて、打設計画書や躯体補修、パトロールの報告書類、月次報告書などを発注者側に提出しています。工程に1日でもずれが出たり、現場でミスが発生したりした場合は正直に記録し、「誰が、いつ、どのように」管理していたのかを完工後でも確認できる形にしています。また、万が一現場でトラブルが発生した場合に備え、書類で報告をすることを心がけています。

工期遅延リスクを下げられる躯体工事会社の特徴
現場は天候などさまざまな外的要因によって工期の変動が生じる可能性があります。そのため、発注検討段階で、工期を絶対に守れる躯体工事会社かどうかを証明すること自体は難しいです。しかし、工期遅延を防ぐ考え方の有無を見極める指標を持っておくことで、工期を守る対応ができる躯体工事会社かどうかがわかります。
人員や資材などの手配が現実的か
工期遅延を見越して、人員や資材の手配で先手を打てる躯体工事会社は工期への解像度が高いと言えます。
たとえば当社では、工期を守るために資材や人員手配の前倒しをできるだけ行っています。工程が固まった時点で、3〜4ヶ月後に必要になる資材や金物などの手配を進めておき、工事が始まる頃には手配を完了させる意識で進めています。こうした進め方が、現場の工期遅延リスクを下げることにつながると考えています。
発注検討中の躯体工事会社には、こういった工期遅延に備えられる運用体制や考え方があるかどうかを確認してみましょう。たとえば以下のような点です。
- 施工管理者の配置や巡回頻度
- 品質検査の担当者
- 工事開始までに何をいつまでに手配する想定か
工程表をもとに工期の根拠を説明できるか
躯体工事会社が工期トラブル発生時にも柔軟に対応できるかどうかは、工程の根拠をどこまで具体的に説明できるかで判断できます。なぜその工期になるのかだけでなく、どの工程をどう調整すれば短縮できるのかまで示せる会社は、現場の制約を踏まえた実行可能な計画を立てられる会社です。
たとえば当社では、躯体工事の工程表をもとに、発注側に対して「どの工程をどのように調整すれば、どの程度工期を短縮できるか」を具体的にご説明しています。単に工程を提示するのではなく、短縮の余地や調整ポイントまで含めて共有することで、発注前の段階から実現可能なスケジュールを判断いただけます。実際に、1フロアの躯体工事で通常2週間程度かかる工程を、6日間まで短縮したケースもあります。

安全な契約にするために事前にやっておくと良いこと
躯体工事会社が担う責任範囲を確認しておく
躯体工事会社と発注側の間で、道具や資材の準備、ゴミ出しや清掃など、細かい運用があいまいなままだと着工後にもめやすくなります。両者で誰が何を担当するかを協議し、細部まで合意形成をしておきましょう。
また、躯体工事会社から発注側に提出された見積の内訳にも注意が必要です。発注側が躯体工事会社に対して、「ここまでは対応してくれるだろう」という前提を持った状態のまま工事が進むと、認識のすれ違いによるトラブルの原因になります。発注側は、躯体工事会社から責任範囲が書かれた書類を受領するだけではなく、書類を見ながら躯体工事会社に口頭で説明してもらう、両者で書類を読み合わせておくなど、見積の内訳をしっかりと把握しておくことをおすすめします。
現場トラブル時に誰が調整・手配・報告を担うかをすり合わせておく
以下のような項目を躯体工事会社と協議しておくことで、現場トラブル時の対応をスムーズに進めやすくなります。
| 項目 | 内容(例) |
|---|---|
| 躯体工事会社/発注側の一次窓口 | それぞれの担当者と連絡手段を決めておく |
| トラブル発生時の報告ルール | どの時点で、何を、誰がどの形式で共有するかを決めておく |
| トラブル対処完了後の流れ | 結果報告の粒度や、誰が報告書類を作成/確認するかを決めておく |
まとめ|成立性・品質・工期を判断基準に躯体工事会社を選ぶ
価格が安いかどうかだけでなく、現場の品質や工期などをどのように担保できる会社かという観点で躯体工事会社を選ぶことが、安定した現場づくりにつながります。
まずは次の3つの判断基準で、信頼して発注できる躯体工事会社を見極めてみてください。
- 成立性:搬入経路や作業時間の制約がある上で工事の計画を立てられるか
- 品質:品質管理においてどのような報告書類が作成できるか
- 工期:人員や資材の手配は現実的か、工程表をもとに工程の根拠を説明できるか
本記事が、躯体工事会社の発注先選定の一助となれば幸いです。納得のいく発注判断の実現をお祈りしています。
執筆:春日燦(IT事業部)
編集:川俣沙織(IT事業部マーケティング部門マネージャー)
監修:宮﨑晃司(施工管理部・品質管理部/安全衛生部)