新築工事を進める上で欠かせない存在である躯体工事。だからこそ、躯体工事が新築工事の工程の中でどのような役割があり、どのような影響を与えるのか、工程を守るために元請として何ができるのかを理解しておくことで、新築工事全体の工程を現実的に組み立てやすくなるはずです。
この記事では、ゼネコンの購買部門の担当者様や、発注先選びを行う立場の方向けに、躯体の工期遅延を防ぐために元請側として確認しておきたいポイントを改めて整理します。
目次
新築工事の全体工程の中で、躯体はどのような位置づけにある?
躯体とは、建物の柱・梁・床・壁など、建物を支える構造部分を指します。人の体にたとえるなら、骨にあたる部分です。RC造やWRC造の建物では、鉄筋を組み、型枠を建て、コンクリートを打設することで、建物の構造を形づくっていきます。
新築工事では、着工から引き渡しまでに内装工事や設備工事など、多くの工程が連続して進んでいきます。建物の骨組みである躯体ができなければ、当然、躯体以降の全ての工程を進めることは不可能になります。つまり、躯体工事は建物の形をつくるだけでなく、後工程が始まるための前提を整える役割を持っているのです。
新築における躯体工事の主な流れ

上記のように、複数の工事が連鎖する流れの中で、必要に応じて是正対応を行います。
ここで重要なのは、設計図通りに躯体が施工できているかどうかです。これは元請側の事前準備が非常に重要になってきます。設備や電気の配管、開口部、スリーブ、ユニットバスやキッチンなどの納まりに関わる部分は、事前に新築に関わるあらゆる図面上で整合を取っておく必要があります。
躯体工事の工程や品質が新築工事全体に与える影響
躯体以降の工事の仕上がりに直結する
建物の床から天井までの高さや、建物全体の高さなど、躯体の大きさは設計図に定められた通りに仕上げる必要があります。極端な言い方をすると、たとえばあまりにも躯体の天井の高さが低い場合など、完成した躯体の形によっては建物内部に設備が入らない・浴室が納まらないといったことも起こりうると言えるからです。
一般的にはそのような大きな問題は発生しませんが、建物全体のクオリティを保持するためにも、躯体工事では設計図に沿った躯体づくりを徹底することが必要です。
後工程の開始時期を左右する
躯体ができていないままだと、建物の骨組みが未完成ということなので、当然ですがタイルなどの装飾、内装や配管、建具の取り付けなどの工事に進めません。また、その後の資材搬入や検査の日程に影響が出る可能性もあります。とくにマンションやホテルなどの同じ作業を階ごとに繰り返す建物では、工程の遅れが積み重なりやすくなります。つまり、躯体が遅れた結果、後の工程に躯体で遅れた分のしわ寄せが出て仕上げ工事などが煩雑になり、品質確認や検査の余裕が少なくなる、といったことが起きていきます。それだけに躯体工事は、新築工事全体の進行に大きな影響を与える重要な工程です。
躯体工事の工程がずれる主な要因

人員・資材・協力会社の段取りが予定どおり進まない
- 予定の日までに鉄筋や型枠などの資材が搬入されていない
- 車両の手配ができていなかった
- いつも発注していた工事会社が倒産してしまった
このようなケースでは、ゼネコンの担当者や現場監督が、別の会社を手配したり資材を探したりと、対応の時間が発生することが考えられます。すると、躯体工事に着手できるまでの時間が延び、結果として新築工事の工程に遅れが生じる恐れがあります。
品質トラブルや是正対応の発生
躯体における品質トラブルの内容によっては追加作業が必要になり、次の工程への移行が遅れる可能性があります。しかし、先述の通り、躯体の仕上がりはその後の工事の納まりや建物の仕上がりに影響を及ぼしやすいため、対応は不可欠です。トラブルに対してはそのまま後工程へ進めるのではなく、工期に大きな影響が出ないよう早急に必要な是正を行う必要があります。
天候などの外的要因
工事は屋外作業が多いため、雨や強風、気温などによって作業効率が下がったり、台風などの悪天候のため作業を一時停止せざるを得ない状況になることもあります。天候は完全にコントロールできません。だからこそ元請側や現場監督、施工会社など、工事に関わるそれぞれが、ある程度悪天候による遅れを見越した動きをすることが求められてきます。
躯体工事の段階で工期遅延を防ぐために元請ができること
躯体の着工前に施工図を確定しておく
設備が納まる設計になっているか、このまま躯体の施工を始めて問題ないか。これらの確認を元請側で進めておくことで、躯体の施工会社が工事を進める上で判断に迷う場面が格段に減り、結果として、着工後の手戻りや確認待ちを減らし、工程遅延を防ぎやすくなります。ここでは施工図をただ作成するだけではなく、躯体、設備、電気などそれぞれの整合が取れているかを事前に確認することが大切です。そろえておきたい具体的な情報の例は以下の通りです。

全体工程から逆算して躯体工程を組み立てる
仕上げ工事や設備工事をいつ始める必要があるのか。躯体の検査や引き渡しまでにどれだけの期間が必要か。後工程の開始時期なども含め、このような情報を元請側から施工会社へ明確に提示できれば、躯体の施工会社としては工事の段取りを考えやすくなります。躯体以降の工事の情報があることで、施工会社は新築工事の全体工程に合わせた作業スケジュールを立てる際も、単に作業日数を削るといったことだけでなく、工程の待ち時間や確認待ちを減らすための工夫を現実的に考えやすくなります。
検査・是正・報告まで見越して段取りする
一つ一つは短時間でも、トラブルへの是正対応は積み重なると大きな工程遅延の引き金になりかねません。だからこそ、トラブル対応の時間や各業者とやりとりを行う時間が発生することを見越した慎重な準備が元請側として必要です。
| 見越しておきたい状況 | 事前に整理しておきたいこと |
|---|---|
| 検査で是正指摘が出る | 誰が確認し、誰が判断し、いつまでに是正するかの流れ |
| 手直しに追加の人員が必要になる | 応援を依頼できる協力会社の候補はあるか |
| 資材が不足、追加が必要になる | 手配する時期や連絡先はあるか、代わりに相談できる会社はいるか |
| いつもの協力会社が多忙・対応不可になる | 代わりに相談できる工事会社や手配先があるか |
| 是正後に再確認が必要になる | 検査日程、写真提出、報告書作成のスケジュールの余裕はどれくらい持たせるか |
工程管理ができる躯体会社に施工までまとめて依頼する
躯体工事では、工種間の取り合いや検査対応、是正対応による工程の調整など、多くの判断が発生します。普段、元請側はこれらを各工事会社別に調整しているケースが多いです。しかしそれには、元請側の業務負担が大きく、各工事会社との確認待ちや調整待ちの時間が発生しやすいといったデメリットがあります。その結果、工程のロスが出る可能性もあります。普段は元請側が行っている工程管理を代行できる躯体工事会社に依頼できれば、問題が起きたときにも早く原因を整理し、必要な対応を進めやすくなります。
山上建設では実際に、工程管理も引き受ける躯体会社としての豊富な経験を活かし、工程トラブルの防止や早期対応に取り組んでいます。
躯体工事会社に発注する前に確認しておきたいこと

躯体工事に伴う調整業務をどこまで任せられるか
同じ「躯体工事会社」でも、
- 工程表の作成
- 協力会社の手配・調整
- 施工・検査対応
- トラブルの是正対応
など、対応範囲は会社によって異なります。すべてを任せられる躯体工事会社に依頼すればよいという話ではありません。ここで大切なのは、発注する前に元請側と施工側の役割分担を明確にしておくことです。責任範囲のあいまいさは工程遅延の元となりやすい要素なので、双方で認識を一致させておくことが大切なのです。
「工程が遅れそう……」に早めに相談できる体制があるか
新築工事では、どれだけ事前に準備していても、現場で予期しない問題が起きることはあります。大切なのは、依頼した躯体工事会社に、問題が起きたときに早めに相談でき、対応できる体制があるかどうかです。
トラブルによる工程の遅れだけでなく、トラブルに対する小さな判断の遅れも、少しずつ積み重なれば大きな工程遅延につながるリスクがあります。反対に、必要な資材や人員を迅速に手配し、手直しにすぐ着手できれば、後工程への影響を抑えやすくなるはずです。
当社では、この考え方のもと、トラブル発生時の的確な判断と素早い対応を重視しています。たとえば、翌日までに必要な資材や人員の手配に漏れがあった場合でも、すぐに代替手段を探し、協力会社や職人の応援手配に動きます。躯体工事会社を検討する際は、施工力だけでなく、工程上の問題に対してどのように対応する会社なのかも確認しておくとより安心です。
躯体工事は新築工事全体の工期を左右する中核となりうる工程
躯体工事は、新築工事において建物の骨組みをつくる工程であり、後工程の開始時期を左右する重要な工程でもあります。工期を短縮・安定化するためには、検査や是正対応まで見越して、主に以下の3点を整理しつつ工程を組むことが大切です。
- 施工図が確定し、躯体図・設備図・電気図の整合が取れているか
- 内装・設備・電気など関係業者が決まり、必要な情報を共有できる状態か
- 検査や是正対応、工程が遅れそうな場面で早めに相談・対応できる体制があるか
一方で、これらをすべて整理し、現場で発生する調整まで担い続ける負担を感じている元請側の方は少なくないのではないでしょうか。だからこそ、施工だけでなく工程管理まで対応できる躯体工事会社に依頼することも安定した工期を保ちながら躯体工事を運用するための選択肢です。皆様の新築工事の案件が、予定どおりに、かつ品質を保った形で完工へ進むよう願っています。
執筆:春日燦(IT事業部)
監修:宮﨑晃司(施工管理部・品質管理部/安全衛生部)