施工管理という仕事では、現場全体を、安全に問題なく進めることが求められます。
しかし、現実では複数の関係者と連携しながら工事を進めるなかで、実際は各工事会社との連携やトラブル対応など、さまざまな確認に追われることもしばしば。ゼネコンなどで現場管理を行う立場の方からすると、「連絡や調整対応に追われていて、全体管理に集中したいのにもどかしい」「施工会社に依頼していても、こちらの工数が減りにくいのはなぜだろう」と感じることも少なくないはずです。
本記事では、このような元請側に発生する連絡・確認・情報収集・資料整理などの工数を「現場調整コスト」として、負担が膨らみやすい現場と抑えやすい現場の違いを躯体工事の施工会社である山上建設の経験をもとに解説します。
目次
調整業務に追われ、現場管理に余裕がなくなるのはなぜ?
業者との認識のすれ違いが発生し、対応に追われる
発注時には「ここまでは施工会社側で確認してもらえる」と考えていても、実際に工事が始まると、元請側と施工会社側で認識している対応範囲が異なっていた、というケースです。
たとえば、現場の納まりや配筋などの確認について施工会社に任せていたつもりでも、施工会社側が確認対象として認識できていなかった場合、最終的には元請担当者が現場へ出向いて確認する必要が出てきてしまうといったことも起こりえます。せっかく施工会社に依頼したにもかかわらず、元請側が施工会社と同じような確認を繰り返す状態になれば、「任せたことで減るはずだった工数」が元請側に残ってしまいます。

情報共有不足で調整・連絡の時間が発生
建設現場では発注先の会社だけではなく、その会社の協力会社の担当者や実際に現場へ入る作業員まで、情報や指示が伝わっている必要があります。たとえば、施工会社の担当者からは、着工前に「この作業は3日間で完了する予定」と説明されていたにもかかわらず、現場に来た作業員からは「この内容では3日では終わらない」と伝えられた場合、元請側は改めて施工会社へ確認しなければなりません。
そこから、
- 指示が伝わらなかった原因・経緯の確認
- 工程への影響を整理する
- 関係者へ連絡する
- 必要に応じて工程を組み直す
といった調整が発生します。小さな認識違いであれば1〜2時間程度で解決できても、関係各所との調整が必要になると数日に及び、次工程の開始時期に影響する可能性もあります。
是正対応の取りまとめを元請側が一任している
施工中に問題が見つかった場合、是正そのものだけでなく、その前後にも多くの調整が発生します。実際に、以下のような作業の多くは元請側の担当者が抱えがちです。
| 元請側に発生する調整業務 | 作業内容 | かかる時間の目安 |
| 問題箇所の確認 | 現場や図面を確認し、どこで問題が発生しているかを整理する | 10〜60分程度 |
| 関係業者への連絡 | 関係する工種や担当者へ状況を確認する | 10〜120分程度 |
| 必要な情報収集 | 図面、施工状況、各業者の予定など判断に必要な情報を集める | 30分〜数時間 |
| 対応方法の整理 | 誰がどのように対応するかを整理し、関係者間で認識を合わせる | 30分〜数時間 |
| 工程調整 | 他工種への影響を確認し、必要に応じて日程や作業順序を調整する | 30分〜数時間 |
| お客様への連絡 | 工程や施工への影響、対応方針などを必要に応じて共有する | 10〜30分程度 |
| 各関係者への完了報告 | 対応内容や完了状況を関係者へ共有する | 10〜30分程度 |
躯体工事を施工会社に分離発注している場合では、各工種から個別に情報が上がってくる体制になるため、その情報をつなぎ合わせる役割まで元請側が担うことになります。
一つひとつは短時間で終わる作業に見えます。しかし、こうした細かな対応が積み重なることで、工程・品質・安全など、元請担当者が本来注力したい現場全体の管理に使える時間や余力が少なくなってしまいます。
現場調整の工数を抑えられる現場は何が違うのか
それは、関係者同士がスムーズに意思疎通できる仕組みが整えられていることです。現場関係者の間で、「誰が対応するのか」「どの内容で進めるのか」「変更事項を誰まで共有するのか」といった認識がそろっていないと、確認のやり直しや追加の連絡が発生します。こうした小さなすれ違いが積み重なることで、元請側の調整工数も増えていきます。
反対に、情報共有や確認の仕組みが整っていれば、認識のずれによるトラブルを予防しやすくなります。できれば以下の状態が理想的です。
- 着工前に各工種の役割と責任範囲が共有されている
- 工程や施工上の注意点を関係者間で共有できる仕組みがある
- 問題発生時の連絡・確認から是正、完了確認までの流れが整理されている
では、こうした状態をつくるために、元請側ではどのような準備ができるのでしょうか。
現場調整コスト削減のために元請ができる予防策4選
1. 施工中の連絡窓口・報告方法・必要資料を明確に決めておく
元請側と施工会社の間で以下の内容を整理しておくと、現場で問題が起きる度に「何を・どのように情報共有するか?」と迷う場面を減らせます。
- 連絡の担当者は誰か
- どのような内容を報告するのか
- どこまで整理してから報告するか
- どの報告資料を誰が作成するか
2. 情報共有先を統一する
業者ごとに報告方法や共有先が異なると、バラバラな情報を整理し直す手間が元請側に増えてしまいます。この手間を減らすには、現場で起きたことや作業指示、工程変更、今後のスケジュールを同じ場所・条件で共有できる状態を作っておくことが効果的です。たとえば、山上建設では、現場ごとに関係者を含めた連絡用のグループチャットを設け、施工状況や作業上の連絡、スケジュール、作業日程のリマインド、現場で気づいた点などを都度共有しています。

作業日程のリマインドを行うグループチャットの例
情報の共有先を一本化しておけば、元請が各業者に向けて個別に連絡する必要が減り、関係者全員が同じ情報を確認しやすくなります。
3. 確認経路を短くし、情報伝達のロスを減らす
建設現場では、基本的に複数の関係者を通して確認が進められます。たとえば設計について質問や指摘を受けたら、ほとんどの場合は元請会社から設計会社に確認し、回答を施工会社に共有し、その後、施工会社が各協力会社に伝える……と、まるで伝言ゲームのように情報共有されていきます。その結果、回答が伝わるまで想定以上に時間がかかったり、情報の抜けや認識のずれが生じたりする可能性は0ではありません。

これを防ぐためには、内容に応じて施工会社が設計会社などと直接やり取りできるようにするなど、元請会社の業務の一部を施工会社に代行してもらうことで、確認経路そのものを短くすることも有効手段の一つです。
山上建設でも、元請会社様の了承のもと、設計者と直接確認を行い情報共有することで、元請担当者が伝達役として何度も間に入る工数を減らせたケースがあります。
4. 施工図や設計内容を事前に整理しておく
図面が十分に整理されていなければ、施工会社や作業者から「ここはどう納めるのか」「この寸法で問題ないのか」といった質疑が増え、元請側が回答準備や確認作業に追われる可能性が高まります。この計画で躯体工事を進めて問題ないか。設備や電気、その後の仕上げなどの納まりへの影響はないか。これらを着工前に施工図でしっかりとチェックしておくと、施工中の確認回数を減らすことにつながります。
躯体工事会社にどのような業務を任せれば元請側の負担が軽くなるか
元請側で管理・調整を行うこと自体は、現場を進めるうえで欠かせません。
一方で、現場調整を自社だけで抱え込む必要はなく、外部に動いてもらうことで楽になることもあります。躯体工事会社である当社を始めとした施工会社には何を任せられるのか、整理してみましょう。
工種ごとの業者手配や情報の取りまとめ
鉄筋、型枠、コンクリートなどの各工事会社へ個別に連絡するのではなく、躯体工事会社を窓口としてまとめることで、元請側が各社と逐一連絡する手間を大幅に減らせます。
設計者・各業者との直接のやり取り
元請側の了承を前提として、施工上の質疑を躯体工事会社から設計者や関係業者へ直接確認できれば、元請担当者が伝言役になる回数を減らせます。これまでは質疑応答に使っていた時間を、本来集中したい業務に当てられるようになります。
工程表作成と各業者との工程打ち合わせ
現場によっては、工程表の作成や各業者との打ち合わせだけでも半日〜1日程度を要することがあります。こうした対応を躯体工事会社側で進められれば、その分の作業時間が削減され、元請側は上がってきた工程の確認に注力できるようになります。
施工状況の確認と、問題発生時の関係者との調整判断
たとえば躯体の施工会社が各工種の進捗や施工状況を日々確認し、問題があった際の是正対応や関係者との調整まで進められる体制であれば、元請側が一つひとつ状況を確認して指示を出す必要がなくなります。鉄筋・型枠・コンクリートなどの工種間の取り合いや工程の調整を施工会社側がまとめて対応し、必要な内容だけを元請側へ報告するため、元請側は全体への影響・重要事項の確認に集中できます。

元請側の現場調整コストを抑え、全体管理に集中する
「確認のために電話を一本する」「各社から情報を集め直す」「回答が来るまで工程を調整する」といった小さな作業が積み重なれば、元請担当者の時間は圧迫されていきます。
調整コストを抑えるには、
- 着工前に役割と責任範囲を整理する
- 情報共有の方法を統一する
- 施工図や設計内容を事前に整理する
- 質疑への回答経路を整えておく
- 必要に応じて、工種間の調整まで外部の工事会社へ任せる
といった準備が効果的です。山上建設では、躯体工事の施工だけでなく、工程表の作成や関係業者との工程調整、施工中の情報共有などにも対応しています。
「施工は任せたはずなのに、元請側の確認や追い回しが減らない」という状態を避けるためにも、工事会社を選ぶ際には、施工できる工種だけではなく、施工中の管理や調整をどこまで任せられるのかという視点でも確認してみてください。
執筆:春日燦(IT事業部)
監修:宮﨑晃司(施工管理部・品質管理部/安全衛生部)