建物の基盤となる躯体工事のパートナー企業の発注検討を行う中で「この会社はしっかりやってくれるだろうか」と立ち止まる瞬間が、一度はあるのではないでしょうか。
もしも躯体工事で品質トラブルが発生してしまうと、その後の工程や工事の品質に大きな影響を与える可能性があります。そのため現場監督としては、できる限り品質トラブルを防げる管理体制が整っている躯体工事会社に依頼したいと考えるものです。
この記事では、躯体工事において、品質を担保しながら現場を運用するための考え方を、管理体制の観点から整理していきます。
品質トラブルは現場だけが原因ではない

躯体工事の品質トラブルというと、
- 技術不足
- 施工ミス
- 確認漏れ
など、現場作業で発生したことが原因としてイメージされることがあります。もちろん施工時のミスが品質トラブルの原因になるケースもありますが、実際はそれだけではありません。
たとえば、
- 誰がどの工程を確認するのか決まっていない
- 工程に余裕がなく、品質担保より作業が優先される
- 記録や報告の範囲が整理されていない
- 現場内のルールや管理基準が共有されていない
といった、管理体制が整っていない状態では、現場全体をどう動かしていくかがあいまいになり、結果的に品質トラブルにつながりやすくなります。報告体制、記録の残し方、工程の組み方、現場の整理整頓など、日常的な管理の積み重ねによって、現場の品質は変わっていきます。
現場監督が躯体工事会社を選定する際は、単純な技術力だけでなく、「どのような管理体制で品質を維持しているか」を確認することも重要です。
品質管理体制が整っているパートナー企業選びの確認ポイント
では、どのような管理体制の躯体工事会社なら適切な品質管理ができるのでしょうか。発注検討中の躯体会社に対し、現場監督から以下の3点を確認しておくと、品質トラブルのリスクを減らしやすくなります。
1. 管理体制の内容が具体的に説明できるか
発注検討中の躯体工事会社に、誰がどのように現場の品質管理をしているのかを確認します。たとえば以下のように、5W1Hの形で確認することで、より詳細な情報を把握することができるはずです。
| When(いつ) | どのタイミングで確認、連絡するのか |
| Where(どこ) | どの箇所を管理対象にしているのか |
| Who(誰が/誰に) | 誰が品質を確認し、誰に報告するのか |
| What(何を/何に/何が) | 品質管理・記録・報告の項目は何か |
| Why(なぜ) | なぜこの管理体制なのか |
| How(どのように) | 品質検査の流れ |
2. 記録や報告の範囲が整理されているか
- 施工範囲
- 写真記録
- 検査記録
- 報告資料
などをどの範囲まで整理・提出しているかも現場監督にとっての確認ポイントになります。
山上建設は躯体工事をまとめてお引き請けする会社として、躯体工事の施工管理の他、各報告書類の作成なども代行しています。
そんな当社は記録や報告の範囲をご説明するため、打ち合わせの段階で現場監督の方に月間報告書のサンプルを作成してお見せする場合があります。これによって、当社がどの工程をどのようにチェックしているのか、現場監督の方に具体的にイメージしていただけています。
3. 工程や対応の根拠が説明できるか
もし躯体工事会社が作成した工程に無理があると、万一のトラブルに対応するためのバッファなどの、品質管理に必要な時間が取りにくくなります。その結果、作業自体のスピードを優先せざるを得ない状況になり、肝心の品質が後手に回る可能性があるのです。
そのため現場監督は、躯体工事会社から、工程が無理なく進められる根拠や工程遅延への対応策があるかまで提示してもらうことがおすすめです。
- その工期で、各工程に必要な確認時間が確保されているか
- 資材・人員の手配が工程に対して無理なく組まれているか
- 万が一の品質トラブル発生時はどのように対応するか
- 天候などの影響で工程が遅れた場合、どのように調整する想定か
このように工程の成立性を説明できる躯体工事会社であれば、品質トラブルが発生した場合に誰が確認し、どのような流れで調整するのかを事前に想定しているため、無理に現場作業を進めるだけの対応になりにくくなります。
整った管理体制は現場全体の意識向上にもつながる
躯体工事会社が管理基準や確認範囲を具体的に整理できていると、現場で動く職人にとって、守るべきルールや確認すべきポイントが明確になります。
どの工程で何を確認するか、品質はどの状態を良しとするか、問題があった場合は誰に共有するか。これらが躯体工事会社側で決まっているため、職人個人の感覚に任せすぎず、現場全体で共通認識を持ちやすくなります。これによって、職人も品質を守るための注意点や、丁寧に作業すべき箇所を把握して動けるようになるのです。
また、管理体制によって基準やルールが現場全体に浸透することで、ミスや確認漏れを見過ごしにくい環境になり、職人の間に良い意味での緊張感が生まれます。
- 作業を雑に進めにくい
- 現場内で声掛けや確認を行いやすい
その結果、上記のような品質を意識した動きがしやすくなり、品質維持につながることが期待できます。

現場の整理整頓や清掃も管理体制の一部
職人の意識向上につながる管理体制の具体例の一つとして、現場の清掃が挙げられます。
躯体工事会社の担当者や職人で、一緒に現場の整理整頓、清掃を行う。山上建設は実際にこれを管理体制として、積極的に現場清掃の時間を作るようにしています。このような体制は、作業をスムーズに行えるようにするだけでなく、職人たちの品質への意識を保つことも目的としています。
これには、汚れている現場よりも、清掃が行き届いている現場の方が、職人が「散らかさずに丁寧に作業しよう」という意識になっていくという考えが背景にあります。
この考え方は「割れ窓理論」に近い部分があります。割れ窓理論とは、防犯対策の理論の一つです。建物の窓が一つでも割れたまま放置されている場所では、やがて他の窓も割られてしまう傾向が高いことから、転じて、小さな不正も徹底して管理することがまち全体の秩序を保つことにつながる、という説です。
割れた窓のような小さな乱れが放置されている環境は、「誰も注意を払っていない」という印象を与えます。人々の中でルールを破ることへの抵抗感が薄れ、「誰も気にしていないみたいだし、少しくらい荒らしても注意されないだろう」という心理状態になりやすくなるのです。逆に考えると、小さな乱れを放置せず早い段階で対処している場所では、人々のルールを守る意識が保たれやすいということになります。
この理論を工事現場に当てはめると、清掃できていない現場よりも、整理整頓や清掃が継続的に行われている現場の方が、職人の心理としては、現場を散らかす・雑に作業をするといったことがしにくくなると考えられます。むしろ、全員で綺麗にした現場をできる限り乱雑にせず、丁寧に進めなければという意識が生まれやすいのです。
当社は整理整頓や清掃は単なる美化活動ではなく、現場全体に品質を意識した行動を浸透させるための管理体制の一部と捉えています。

まとめ|品質トラブルを防止する管理体制の視点
現場監督が、品質を担保しながら躯体工事現場を運用する上で重要なのは、施工技術の高い工事会社を選ぶことだけでなく、現場全体の管理体制を整える視点を持つことです。
躯体工事会社に現場管理を依頼するときは、以下の3つを参考に、品質トラブルを未然に防ぐための考え方がそろっている会社かどうかを確認してみてください。
- 管理体制の具体的な内容
- 工程の成立性
- 記録や報告の残し方
また、整理整頓や清掃状態のような日常的な現場運用も、品質管理と無関係ではありません。小さな乱れを放置しない管理体制は、現場全体の品質意識を保つことにもつながります。本記事が、現場監督のみなさまにとって、品質トラブルの起きにくい現場づくりや、より良い発注判断を行うための参考になれば幸いです。
執筆:春日燦(IT事業部)