マンション躯体工事の特徴とは?工程を安定させる管理のポイント

リスクを抑えてマンション躯体工事を進めたい発注者様のために

鉄筋・型枠・コンクリートなど複数の工種間の取り合い調整、工程調整、業者手配。
ゼネコンで発注を担う立場の方であれば、マンション建築を計画通りに進めるために多くのことに気を配っているのではないでしょうか。

本記事では、そんなゼネコンの発注担当者を始めとした、マンション躯体工事を計画中の元請会社様に向けて、 RC・WRC造のマンション躯体の特徴や、工程・品質を守るための考え方をまとめています。また、実際にマンション躯体工事の施工管理を行ってきた山上建設の実体験を元に、トラブルが起きやすい場面とその対処法もご紹介します。

マンション躯体の特徴その1:1フロアの施工サイクルを重ねていく

マンションやアパートなどの複数階の建物は、2階以上の階は同じ間取り・納まりであることが多く、いわゆる「基準階(※)」という概念があります。2階の躯体の施工が完了したら、3階でまた同じ間取りで躯体を作る。これを繰り返します。マンションの躯体工事では基準階に沿って同じ施工を繰り返すことで、職人が作業に慣れていき、階が上がるにつれて施工効率が高まることもあります。その反面、一つの階で遅れや施工上の問題が発生すれば、次の階の着手時期にも影響を与えやすいので注意が必要です。

※基準階とは:マンションやアパートなどで、複数階に渡って同一の間取りや仕様のフロアがある場合、施工の基準となる一般的な形状のフロアのこと。

マンション躯体の特徴その2:住宅工事よりも資材搬入に時間がかかりやすい

マンション工事は階数が多くなりやすいため、おのずと住宅の工事に使用するものよりも大きい揚重機械が必要になります。機械が大きい分、以下のように地上で行う資材搬入よりも想定以上に時間が必要になる可能性があります。

搬入工程一般住宅・平屋:人力中心マンション:揚重機械を使用
車両到着後の準備・搬入位置の確認約5〜10分約10〜20分
車両から資材を降ろす準備約5分約10〜20分(玉掛けなど)
資材を施工場所まで運ぶ約5〜15分約1〜5分/1回の揚重
資材を受け取り、所定位置へ移動約5〜10分約5〜10分
1回の搬入にかかる時間の目安約15〜40分約60〜90分程度

マンション躯体の特徴その3:工事規模が大きい分、元請側の調整負担も増えやすい

一般住宅とマンションの躯体工事では、構造や使用材料、工事金額、施工にかかる期間などの前提が異なります。その分、工程のずれによって動く金額も大きくなりやすいため、元請側による発注先の選定や、施工中の判断が与える現場への影響範囲も小さくありません。
さらに、入居開始日があらかじめ決まっている案件では、工事の遅れによって、

  • 入居者全員の引っ越し日程の変更
  • 入居可能日までの入居者の宿泊先の手配

など、元請側に追加の調整対応が発生する場合もあります。
こうした影響範囲の大きさからも、マンション躯体では工程を予定通り進めるための管理が重要です。

マンション躯体現場で発生しやすいトラブル場面の例

躯体の後工程の業者が予定したタイミングで現場に入れない

一般的に、躯体工事会社から「この日までに躯体工事が完了する」と伝えられたら、元請は電気や設備の協力会社に作業開始日程の指示をし、職人さんを現場に手配します。しかし、電気・設備の協力会社との認識違いが起きていたり、職人さんに指示が正確に行き渡っていなかったりすると、「作業予定日なのに現場に職人さんが来ていない」といった事態につながりかねません。この場合、

  • 現場状況を確認
  • 手配ができていなかった原因の確認
  • 電気・設備の協力会社との認識のすり合わせ
  • 作業日程の再調整・指示

などの調整作業が一気に元請側に舞い込んできます。たとえ施工そのものに問題がなくても、連絡や手配の抜けによって次工程が止まる可能性があります。

資材搬入が予定通りに行えず工程がずれそうになる

搬入経路や荷下ろし、揚重機械を利用するタイミング、搬入作業時間などが当初の計画通りに進められないと、資材が現場にそろうのが遅れ、作業開始が後ろ倒しになってしまいます。階数が高ければ高いほど必要な揚重機械は大きくなり、資材搬入にかかる時間も変わるからこそ、マンションの現場ではとくに慎重な手配が必要です。

資材搬入の前に整理したい条件

このような条件は計画段階で把握し、工程に組み込む前提で作業時間を確保しておくことが大切です。

実際に工程遅れが続いた現場で、山上建設が行った躯体工事の工程立て直し

「躯体の上棟日を当初の計画より3週間ほど縮めてほしいです」
とある現場で工程遅れのトラブルが発生し、躯体工事の施工中、元請会社様からこのようなご依頼を受けました。当社がどのように対処したのか、一例としてご紹介します。

1. 躯体工事の工程を引き直す

元請会社様が希望する上棟日に合わせるため、マンション建築全体の工程を確認しつつ、3週間ほど短縮する想定で躯体の工程表を引き直し、どこの作業をどのように進めれば短縮できるかを整理しました。

2. 躯体に関わる各業者に、作業日数を短縮できないか連絡し調整

予定していた作業日数から1日ずつ減らすことが可能かどうか、鉄筋・型枠・コンクリートなど各工事を担当する工事会社に確認し、引き直した工程内に納められるよう依頼しました。

3. 作業期間と流れを細かく整理し各業者に指示

「何日までにどこまで施工するか」「どの部分が終わったら次の工種に入るか」と、通常より細かく作業範囲とタイミングを設定しました。また、職人さん全員に情報が行き渡ることを目指し、作業日や手順について、こまめにリマインドを実施しました。

4. 効率的な体制で作業を実施

一つの工種がすべて終了してから次の工種に入るのではなく、施工が完了した部分から次の工種が追いかけて作業する「ラップ作業」を実施しました。

ラップ作業とは

上記の取り組みによって、結果的に約3週間分の工程を取り戻しました。しかしながら、ラップ作業は工事が迅速に進められるメリットがある反面、デメリットもあるため慎重な判断が必要です。複数の工種が同じ場所で施工するため、職人さんにとっては作業効率が落ちやすくなるリスクがあります。
工程を巻き返す力も必要ですが、本来は大きな巻き返しが必要になる前に遅れの兆候を見つけ、通常の施工サイクルの中で調整できる状態をつくることが重要です。

マンション躯体だからこそ工程圧縮できたケースもある

一方、マンションでは基準階を繰り返すことによって自然と施工の効率が上がり、工期が縮まるケースも多いです。山上建設では、躯体工事の進捗が計画よりも早く進んでいる様子であれば、「次の階はこの日数で進められそうか」を各協力会社に確認し、対応可能であれば工程を調整しています。このような対応によって、実際に当初1フロア14日程度で組んでいた工程を12日程度まで短縮できたケースもあります。
ただし、早く進んでいるからといって、必ず次工程を前倒しするわけではありません。今後、トラブルが発生する可能性を考え、早く進んだ分を工程上の余白として残す場合もあります。工程を短縮するか、バッファを確保することを優先するかどうかは、現場状況を見た上で判断することが大切です。

安定して進む現場は、問題に直面するタイミングが早い

工事で起こるすべての問題は事前に全て予測できるわけではありません。工事現場の多くは人間が動かしているもの。だからこそ、認識違いや情報共有不足などを完全にゼロにすることは簡単ではありません。しかし、たとえば着工の前日に初めて図面を見るのと、1週間前、1か月前から確認しているのとでは、準備できることや使える時間も変わります。これは、現場で万が一のトラブルが起きた時も同様です。問題を早く見つけることができれば、以下のような調整作業に使う時間を、さらに余裕を持って確保しやすくなります。

  • 是正対応
  • 関係者への相談
  • 業者の再手配
  • 工程調整

山上建設では、躯体工事の現場トラブルの兆候や問題点の発見などを早い段階から行えるよう、施工管理者に加え、「品質管理」をメインで行う担当者が現場を巡回し、施工管理者と連携しながら現場状況のチェックを実施しています。

マンションの躯体を計画通りに進めるために元請会社ができること4選

問題に直面するタイミングが早い現場をつくるためには、現場関係者の情報共有の正確さがカギとなります。そのため、元請会社は施工会社に、必要な情報を迅速にわかりやすく共有し、常に関係者が次の動きを把握できる状態を作っておくことが理想的です。具体的に意識しておきたいことは以下の4つです。

正確な情報共有のためにできること

ただし、元請側ですべての連絡や調整を抱える必要があるとは限りません。
山上建設は、元請との定例会、作業予定日の1〜2週間前や前日など、タイミングを変えながら躯体の協力会社へ繰り返し作業日程を確認しています。また、元請会社様に手配いただいた電気・設備会社さんについても、躯体上棟後、現場へ入る時期や作業タイミングなどの連絡を直接行わせていただくケースがあります。「現場に職人が来ていない」といったトラブルを防止し、実際に元請のご担当者様からご評価いただいています。
問題になりそうなことを早く見つけ、まだ調整できる段階で動ける状態をつくる。そのためには施工会社に現場管理・業者手配の一部を任せることも、リスクを抑えた現場づくりの手段の一つです。

まとめ|早めの確認がマンション躯体工事の工程と品質を支える

マンション躯体工事は、基準階の反復によって施工効率が上がることがある一方、連絡や手配のずれによって一つの工程が止まれば、その影響が後工程へ広がることもあります。だからこそ重要なのは、問題が起きてから巻き返すことだけではありません。関係業者と認識のずれが起こらないように作業日程をこまめに共有し、施工中も品質や進捗を確認する。問題になりそうな点があれば早めに動く。このように現場で起きうる問題に早めに対処することが大切です。そのためには、元請会社と施工会社の間で、迅速で適切な情報共有を意識することが求められます。本記事が、マンション躯体工事の発注先を検討する際や、工程・品質を安定して管理できる現場づくりを考えるうえでの参考になれば幸いです。

執筆:春日燦(IT事業部)
監修:宮﨑晃司(施工管理部・品質管理部/安全衛生部 部長)、岩里哲徳(施工管理部 1課 課長)

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